坪庭照明設計の基本:光と影の使い方
坪庭は、日本の住宅建築が生み出した独特の外部空間です。建物に取り込まれた小さな庭は、昼間は採光と通風の役割を果たしますが、夜になると照明次第でまったく異なる表情を持ちます。この記事では、坪庭の照明設計で当社が基本にしている考え方を整理します。
光源を隠すことが最初の仕事
坪庭の照明設計で最初に考えるのは、器具をどこに隠すかです。3畳以下の空間では、器具が視界に入るだけで空間の静けさが損なわれます。石の陰、植栽の根元、縁石の裏側など、視線が届きにくい場所を探すことが設計の出発点になります。
光源が直接見えない状態で空間が明るく見えるとき、人は「光がどこから来るのかわからない」という感覚を持ちます。この感覚が、坪庭の夜の静けさをつくります。
器具の数は少ない方が良い結果になる
3畳の坪庭であれば、スポットライト1〜2灯と足元灯1灯の合計2〜3灯で十分なことがほとんどです。光源を増やすほど影が消え、空間の奥行きが失われます。
影は設計するものです。どこに影を落とすかを先に決め、そこから逆算して光源の位置を決める。この順序で考えると、器具の数は自然と少なくなります。
苔と石灯籠への配光角度
苔を照らす場合は、光を真上から当てるのではなく、斜め15〜30度の角度から当てることで苔の凹凸が影として浮かび上がり、質感が強調されます。
石灯籠がある場合は、灯籠自体を光源として機能させるのではなく、灯籠の周囲を間接光で包むことで、より自然な夜の庭の雰囲気が生まれます。灯籠の内部に小型LEDを仕込む方法もありますが、光量が強すぎると周囲との対比が崩れるため、調光器との組み合わせが必要です。
色温度の選び方
坪庭には2700K前後の電球色を基本としています。3000Kを超えると白みが強くなり、石や苔の自然な色味が薄れます。植栽の緑を強調したい場合は、演色性Ra90以上の器具を選ぶことで、葉の色が自然に再現されます。
坪庭の照明は、器具の数や明るさよりも「何を照らさないか」の判断が仕上がりを左右します。照明プランと施工メニューのページもあわせてご覧ください。